脳梗塞の後遺症で寝てばかりに?原因・改善法を解説

脳梗塞は、脳に血液を供給する血管が詰まることで、脳組織が深刻なダメージを受ける疾患です。
発症後には、麻痺や言語障害、記憶障害など、様々な後遺症が残ることが知られていますが、その中で意外と多く見られる状態が「日中ほとんど寝てばかり」という現象です。
家族や介護者は、「なぜこんなに寝続けるのか」「もう少し起きてリハビリや趣味に取り組めないのか」と不安や苛立ちを感じることもあるでしょう。
しかし、この「寝てばかり」の背後には、脳機能の低下や体力消耗、意欲減退、薬の副作用、そして心理的ストレスなど複数の要因が複雑に絡み合っています。
本記事では、脳梗塞後に患者さんが長時間ベッドや布団で過ごす理由を分かりやすく解説し、改善策やサポート法、そして将来の新たな可能性として注目される再生医療についても触れます。
読者の皆さんがこの記事を読み終える頃には、現状を理解し、少しでも前向きな一歩を踏み出すためのヒントを得られることを願っています。

 

脳梗塞とは?後遺症としての疲労感

脳梗塞は、主に血栓や動脈硬化によって脳内血流が途絶え、神経細胞が壊死することで起こります。
発症後、失われた機能を補うために、脳は懸命に神経回路を再編成しようとしますが、これは非常にエネルギーを必要とするプロセスです。
結果として、患者さんは想像以上に疲れやすくなります。
わずかな動作でも消耗し、脳が「休ませてほしい」と信号を送るかのように、長時間眠り続けてしまうのです。
これは決して怠けではなく、生体が回復を図るために必要な防衛反応ともいえます。[1]

脳機能再編とエネルギー消費

脳はダメージを受けた際、残存する神経ネットワークをフル活用して機能の一部を補おうとします。
この適応過程は神経可塑性と呼ばれ、記憶や学習、感覚・運動機能を再獲得するための重要な仕組みです。
しかし、神経可塑性を発揮するには、大量のエネルギーと休息が欠かせません。
そのため、長時間の睡眠や昼間のまどろみは、ある意味で脳の自然な回復戦略と考えられます。

疲労度を高める要因

体力低下:発症前は容易だった動作が困難になり、余計なエネルギー消費が増加
精神的疲労:集中力低下や意欲減退が慢性化し、気力まで消耗
不十分な睡眠の質:夜間睡眠が浅くなり、昼間に眠気が蓄積

 

脳梗塞後「寝てばかり」になる主な原因

「寝てばかり」の背景には、以下のような多面的な原因があります。

肉体的要因:弱った身体と動作困難

筋力低下やバランス感覚の喪失は、簡単な移動すら難しくします。
これにより、少し動くだけでも大きな疲労を感じ、横になって休む時間が増加します。
無理に起き上がろうとして転倒リスクが高まれば、恐怖や不安がさらなる臥床時間延長を引き起こすかもしれません。

悪循環の克服には小さな運動から

・ベッド上での簡単なストレッチ
・介助者によるサポートで数分立ち上がる練習
・軽いゴムバンドなどを使った筋力トレーニング

精神的要因:意欲低下、うつ傾向、閉塞感

体が思うように動かず、外出や趣味が制限されると、自尊心や達成感が得にくくなります。
これが無気力感や軽度のうつ状態につながり、「起きていても楽しいことがない」という認識が根付きます。
感情面での停滞は、身体的回復にも悪影響を及ぼし、最終的に「寝ていた方が楽」と感じてしまうのです。

心のケアへのアプローチ

・カウンセリングや認知行動療法でネガティブ思考を改善
・音楽やペットとのふれあいなど、心の癒しとなる活動
・小さな成功体験(コップ一杯の水を自力で飲む、短時間座位を保つ)を家族と共有し、達成感を演出

薬物・睡眠障害・覚醒維持機能の低下

脳梗塞後には血圧管理や再発予防、痛み・しびれ対策のため複数の薬が処方される場合があります。
その中には眠気を誘発する副作用を持つものもあり、昼間の覚醒維持を困難にします。
また、脳損傷が睡眠-覚醒リズムを乱し、夜間熟睡できないことで昼間眠くなる「昼夜逆転」が生じることも。

睡眠改善策

・就寝前のスマートフォン・TV視聴を控え、落ち着いた環境を整える
・必要に応じて睡眠専門医へ相談する
・夜間の頻尿対策(就寝前の水分制限、利尿薬の服用タイミング調整)

 

寝てばかりいるときの問題点とリスク

長時間横になる状態には多くのデメリットが存在します。

身体的リスク:褥瘡、関節拘縮、血行不良

床ずれは皮膚が常に圧迫されることで生じます。放置すれば感染リスクや痛み、治療期間の延長を招きます。
関節拘縮により関節が固まると、後のリハビリが難航します。
さらに血行不良は全身状態の悪化や免疫低下をもたらし、回復を遅らせてしまいます。

対策例

・定期的な体位変換(2~3時間おき)
・圧力分散マットレスやクッションの利用
・理学療法士の指導で関節可動域維持運動を組み込む

社会的・心理的影響:孤立とQOL低下

リハビリやデイサービスへの参加が減少すれば、他者との交流が減り、社会的孤立感が強まります。
これにより、さらなる意欲低下やうつ傾向が進む可能性があります。
家族もケア疲れや精神的負担を感じるでしょう。

コミュニケーション手段の工夫

・タブレット端末でのオンライン交流
・定期的な電話やビデオ通話での外部刺激
・家族や友人がミニイベント(お茶会、写真鑑賞会)を企画

 

改善に向けたリハビリと生活習慣のポイント

少しずつで構わないので、起き上がりやすい環境づくりと、継続可能なリハビリが鍵となります。

リハビリ計画:段階的アプローチ

「いきなり1時間起きていよう」ではハードルが高すぎます。まずは5分、10分と短い時間から着実に増やしましょう。
理学療法士や作業療法士と相談し、個々の状態に合ったプログラムを組むことが大切です。

具体例

・第1段階:ベッド上で上半身を起こし、数分維持
・第2段階:車椅子や椅子に移乗し、10~15分座る
・第3段階:室内を数歩移動、歩行器や手すり利用
・第4段階:短い散歩やデイサービスでの軽運動参加

食事・栄養管理でエネルギー補給

栄養バランスが悪ければ疲労回復は望めません。
たんぱく質・ビタミン・ミネラルを補給し、脱水を防ぐことで身体機能全体を底上げします。
食が細い場合は、少量でも高カロリー・高たんぱくな補助飲料を取り入れるなど、医師・管理栄養士と相談して工夫しましょう。

食生活の改善アドバイス

・柔らかい食材を使用して摂取しやすくする
・色とりどりの野菜や果物で食欲刺激
・スープやシチューなど温かいメニューでリラックス効果

生活リズムの確立と刺激の付与

朝はカーテンを開け、自然光を取り入れ、日中はテレビや音楽などで軽い刺激を与えることで、体内リズムを整えます。
小鳥の鳴き声や室内植物の緑といった自然の要素も、わずかながら心身にプラスに働きます。

日常に楽しみをちりばめる

・毎日決まった時間に好きな番組を見る
・季節の花を飾るなど簡単な環境変化
・曜日ごとに違う軽い運動(指体操、塗り絵、音楽鑑賞)

 

家族・介護者ができるサポート

家族が心がけるべきは、押し付けではなく「共に寄り添い、励ます」姿勢です。

ポジティブな声かけと目標設定

「また寝てるの?」という否定的な発言ではなく、「今日は5分座れたね、すごいよ!」と褒めることで、患者さんの内なる意欲を育みます。
短期目標(1日5分座位維持)と長期目標(数週間後に屋内歩行)を設定し、小さな成功体験を積み重ねることが重要です。

家族のストレスケア

サポートをする家族もストレスをため過ぎないことが大切です。
・家族同士で情報共有し、責任を一人に集中させない
・地域の介護者サポートグループやオンラインコミュニティを利用
・プロに相談(ケアマネージャー、ソーシャルワーカー)して制度活用を模索

専門家・地域資源との連携

訪問看護師、デイサービス、デイケア、地域リハビリ施設など、外部の支援を組み合わせることで、家族だけでは難しい多角的なサポート体制を構築できます。
これらの専門家は豊富な経験とノウハウを持ち、患者さんに合った提案や目標設定が可能です。

活用できるサービス例

・訪問リハビリ:自宅での個別プログラム実施
・地域包括支援センター:各種制度やサービスの案内
・福祉用具レンタル:歩行器、手すり、車椅子など補助具利用

 

医療的な対応・専門医への相談

過度な眠気や昼夜逆転が続く場合、専門医の意見を求めることをおすすめします。

薬物調整と副作用対策

主治医に相談すれば、薬剤変更や投与時間調整によって眠気を軽減できる可能性があります。
記録を取り、日中の眠気度合いや夜間の睡眠状況を報告することで、医師はより適切な判断が可能です。

医師への情報提供ポイント

・日中起きている時間と寝ている時間の記録
・夜間の覚醒回数、トイレ回数
・食欲変化や体重の推移、痛みの有無

メンタルケアと専門的カウンセリング

心の不調が疑われる場合、心理士や精神科医との面談を検討してみましょう。
気分障害や不安症状が改善すれば、自然と起き上がる意欲も増し、リハビリや社会参加がスムーズになります。

心身一体のアプローチ

・抗うつ薬や安定剤の適正使用
・芸術療法、回想療法で過去の良い思い出を振り返り、生きがいを再発見
・軽い運動や、ストレッチでリラックス効果を高め、ストレス軽減

 

再生医療による回復の可能性

近年、脳梗塞後遺症の改善を目指す再生医療が注目されています。
幹細胞を用いて神経組織の再生や血流改善を促し、機能回復を目指す試みが行われています。

幹細胞治療と臨床試験

患者自身の骨髄や脂肪組織から採取した間葉系幹細胞を培養し、点滴で戻すことで損傷部位近くに移行させ、組織修復や新生血管促進を期待します。
国内外でさまざまな臨床試験が進み、運動機能や感覚改善が報告されてきています。

情報収集と専門医への相談

再生医療はまだ確立途上のため、信頼できる情報源から最新動向を把握し、主治医や専門医に相談しましょう。
将来的な可能性を視野に入れつつ、今できるリハビリや生活改善との組み合わせで、より高い回復を目指せます。

大阪で脳梗塞後遺症に対する再生医療を受けられる医療機関

脳梗塞・脊髄損傷クリニック大阪院(福永記念診療所内)

脳梗塞・脊髄損傷クリニックは、全国に6院を展開する神経再生に特化した再生医療クリニックです。
500件以上の治療実績と、7名の専門医を有する脳卒中再生医療のパイオニアともいえるクリニックで、幹細胞治療と神経再生リハビリを組み合わせた「リニューロ®」治療を受けることが出来る専門クリニックです。
神経再生クリニック|脳梗塞・脊髄損傷クリニック
【公式】脳梗塞・脊髄損傷クリニックについて詳しくはこちら

マサキここちクリニック

マサキここちクリニックでは、再生医療を活用した脳血管障害(脳梗塞・脳出血など)や脊髄損傷に対する治療をはじめ、脳神経外科医の専門的視点から頭痛、めまい、認知症に対する診療も行っております。さらに、脳血管障害をできるだけ早期に把握するため、生活習慣病に関するご相談・治療にも積極的に取り組んでおります。
脳出血再生医療を行っているマサキここちクリニック

まとめ

脳梗塞後「寝てばかり」の状態は、多面的な要因が絡み合う結果であり、決して患者さんの怠惰や努力不足ではありません。
身体的な筋力低下や疲労、精神的な意欲低下、薬物副作用、睡眠障害、そして社会的孤立が連鎖して「起き上がれない」状況を生み出しているのです。
だからこそ、一つずつ要因を見極め、対処策を積み重ねることが大切です。
リハビリによる筋力回復、小さな成功体験による意欲向上、環境整備や食生活改善、家族や専門家の支援、さらには新たな選択肢としての再生医療など、多角的なアプローチで改善を目指しましょう。
焦らず、着実に歩みを進めることで、患者さんが少しでも長く起きていられ、生活の質を高められる日が訪れる可能性は十分にあります。
前向きな姿勢で情報収集し、適切なサポートを得ながら、より良い未来へ向けた一歩を踏み出してみてください。
#脳梗塞 #寝てばかり #再生医療

[1]Huang, G. H., Ahmed, S. O., Devlin, M., & Hachinski, V. (2011). A pilot study of excessive daytime sleepiness in stroke survivors: association with stroke severity and lesion location. Journal of Stroke and Cerebrovascular Diseases, 20(5), 410–413.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6344831/

 

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